不妊治療

診療内容 / 検査〜治療の流れ

妊娠しにくい原因をしっかり検査
一人ひとりに適切な不妊治療、および妊娠初期管理をトータルにケア

空の森KYUSHUでは、「お二人の健康と幸せに寄り添う医療」を心がけています。
まずは時間をかけてじっくりとお話を伺い、妊娠しにくい原因を調べるための検査を行います。
検査結果に応じ、体外受精もしくは顕微授精を適切に行います。
また、場合によって不妊治療に必要な腹腔鏡や子宮鏡などを用いた婦人科的手術療法も 提携病院と連携を図りながら対応しています。
さらに妊娠前の身体のケアや妊娠後の母体・乳児をはじめご家族の健康、
健康教育まで一貫して行うことも当クリニックの大きな特徴です。

診療内容

検査・治療の流れ

まずは不妊検査で、できにくい原因を究明することからはじめます。医療の介入度の低い順にステップアップ方式で治療を進めます。

基礎不妊検査

  • 基礎体温
  • ホルモン検査
  • 超音波検査
  • 精液検査
  • クラミジア検査
生理中
その周期に行なう検査・治療の計画を立てる。
生理終了~排卵日
種々の検査、卵胞のチェック。
排卵日直前
卵胞、卵胞ホルモン、頚管粘液のチェック、タイミングの指導。
排卵後7日目頃
必要があれば、黄体ホルモンの採血。

体外受精(IVF)

卵子と精子を体外の培養液内で受精させます。排卵誘発剤を使ってできた成熟した卵子を体から取り出し、その上に精子をふりかけます(媒精)。そして精子が自ら泳いで卵子の中に入り込むのを待ち、受精させます。受精した卵は3~5日間培養をした後に、状態が良い胚を子宮内に移植します。移植から2週間後くらいには妊娠しているか結果が出ます。


顕微授精(ICSI)

体外受精では受精卵が得られない可能性が高い場合(乏精子症、精子無力症など)に行う治療です。取り出した卵子と精子を顕微鏡下で授精させます。状態の良い精子を顕微鏡で選別し、卵細胞内に直接送り込みます。

凍結融解胚移植

体外受精や顕微授精でできた胚(受精卵)を凍結保存しておき、子宮内の環境を整えて、胚を融解して子宮内に移植する方法です。

着床障害に対する検査及び治療

体外受精や顕微授精で得られた形態の良好な受精卵を、複数回にわたり移植しても着床に至らない場合を着床障害と定義し、以下の検査、治療を実施することがございます。

1. 子宮鏡検査

子宮内に着床の妨げになるような子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、慢性的な子宮内膜の炎症がないか、子宮の形態に問題がないか、などを確認します。


2. 慢性子宮内膜炎検査

不妊や不育症でお悩みの方の中には、子宮内膜に慢性的な炎症をもっている方が30%程度存在すると報告されています。これらは子宮内を内視鏡(子宮鏡)で検査をすることで発見されることがあります。
またより詳細な検査として、子宮内膜組織を採取し、内膜組織中の形質細胞の存在を顕微鏡で検査するCD138抗原検査を行うことで、炎症の存在を確認する方法があります。慢性子宮内膜炎があった方は抗生剤を使用して治療することにより、妊娠率が改善するという報告があります。


3. 子宮内膜受容能検査(ERA検査/ER-peak検査)、内膜日付診

子宮内膜には、受精卵の着床できる最適なタイミングがあるといわれ、その時期のことを「着床の窓:Window of Implantation」と呼ぶことがあります。着床障害の方の中には、胚移植の最適なタイミングが通常より早すぎたり、遅すぎたりする方がいることがわかっています。その適切なタイミングを検査するために、移植時期と同様に子宮内膜の調整を行い、子宮内膜組織を採取します。病理検査(内膜日付診)や遺伝子解析(ER-Peak検査、ERA検査)を行うことにより、その方の本来移植すべき適切なタイミングを検査することが可能です。

ERA®(子宮内膜着床能検査)


4. 子宮内フローラ検査

子宮内腔には乳酸菌が多く存在し、妊娠維持に関する機能の一助になっていると考えられています。近年の遺伝子解析技術の進歩により、腸内や子宮内などにどのような細菌がいるかを検査することが可能となりました。これにより腸内の細菌叢(腸内フローラ)や子宮内の細菌叢(子宮内フローラ)を検査し、どのような種類の細菌が生息しているのかについて、そのバランスを知ることができるようになりました。
また、不妊でお悩みの方の中には、子宮内の乳酸菌が減少している方がいることがわかってきました。子宮内の組織を採取し、子宮内の遺伝子を解析することで、細菌叢(フローラ)のバランスを検査し、治療に役立てることができる可能性があると言われています。

子宮内フローラ検査


5. 血液凝固因子

着床障害と不育症(妊娠しても流産を繰り返してしまう症状)にはいくつかの検査項目においては、共通して異常を伴いやすいものがあります。
その一つが血液凝固因子です。受精卵が着床し、子宮内膜へ侵入していく過程で、子宮内膜の血管を巻き込みながら胎盤を形成します。この過程で血液が固まりやすい傾向があると、循環不全をおこし、流産の原因となります。第12因子、プロテインS、プロテインCなどの血液凝固に関与する因子の活性が低下していると、これらの病態を引き起こしやすいと考えられています。また着床不全の方の中にはこれらの凝固因子が同様に低下している方が一定の割合で存在していることがわかっています。その程度に応じて不育症に準じた治療を実施する可能性がございます。


6. 内膜菲薄化

PFC-FD療法
着床障害の方の中には、子宮内膜が薄いことがその原因となっていることがあります。一般には排卵前の子宮内膜厚が7.0mmに満たない場合に、着床しにくくなることが知られており、低用量アスピリン療法、ビタミンE製剤、などの薬物療法を併用し、子宮の血流改善を行いながら移植します。しかし、それでも十分な内膜厚に達しない場合に、新規の治療方法として、ご自身の血液から得られた多血小板血漿(PRP)を子宮内に注入する治療方法が試みられています。血小板には、多くの成長因子や、血管新生因子などが含まれていますが、これらの作用により、内膜をより妊娠に適した状態に構築するのが目的です。当院ではこのPRPに含まれる細胞成分をなくし、フリーズドライ化したPFC-FDを使用して子宮内に注入する治療法を実施しています。
PRPを用いた治療により、子宮内膜の厚みを増す可能性、十分な厚みができなかった場合でも、より着床しやすい内膜をつくる可能性が報告されています。


7. 着床期子宮蠕動異常

着床時期に子宮の動きを頻回に認める場合には、妊娠しづらい事がわかっています。子宮筋腫のある方では、特にその傾向が顕著に見られ、手術療法により改善することも報告されています。また、原因不明の不妊症の方にも、異常な動きが頻回に出現する場合があり、薬物療法により、妊娠しやすくする可能性があると考えられています。